「支え合いが生まれる瞬間|就労継続支援事業の現場から」

就労継続支援B型から見る|「支える」という言葉に潜む “上下”
福祉の現場で日常的に使われる「支援」「サポート」という言葉。
一見やさしい響きですが、その裏には“支える側”と“支えられる側”という無意識の上下関係が潜んでいます。
就労継続支援B型で働く中で、私はこの常識を覆す体験をしました。

1.就労継続支援B型から見る|「立場逆転現象」

誰しも何かをするのに「初めて」を経験します。
就労継続支援事業所のスタッフ(指導員)、サービス管理責任者として働くこと。  
僕自身もその「初めて」を経験し、今があります。
就労継続支援事業所で働くことになった時、先輩が教えてくれる。                                                                       
でも、何度か教えてもらったことを忘れてしまいご利用者の方々に迷惑をおかけしてしまうことは度々。
「当時は自分は支援をする側なのに…」「すぐに覚えてなんでも指導できるようにならないと」なんて考えていました。
ある日、まだまだ作業内容を覚えていない僕に一人のご利用者さんが話しかけてくれたんです。
「まだ、覚えとらんの? 一緒にやりゃあ覚えれるでしょ。こっちきて」
いわば「立場逆転現象」                                                                                     おかげで覚えれなかった作業が1時間足らずで覚えることができたのです。

2.就労継続支援B型から見る|「立場逆転」ではなく「支えあい」の瞬間

これは立場逆転現象なんかではない。「支えて」「支えられて」の繰り返しなんだと感じた瞬間でした。

教えてくださるご利用者さんも楽しそう。作業を覚えられる僕も楽しい。                                                                   なんなら、プライベートの話までしちゃう。

実は、もとから立場逆転なんてものはなく、「みんながみんなを支えて」「みんながみんなに支えながら」生きているんだと感じ始めました。

3.就労継続支援B型から見る|支援は“一方通行”なのか

これはあくまでも僕の考えなのでこの考えをそのまま今働かれている事業所や職場で遂行すると、とんでもないイレギュラーと衝突が起きるのも事実です。                                  「スタッフ」「利用者」の立場でくすぶっている方々でこの考えに共感してくださる方が多ければ多いほど救われるのではないかと信じています。

一つ言えることは支援は一方通行ではない。

4.就労継続支援B型から見る|再確認できたこと

人生は「よーいどん」で全員が横一列でスタートするものではないからこそ
早く生まれた90歳、後に生まれた40歳、もっと後に生まれた20歳、10歳、0歳 それぞれがそれぞれのペースで進んでいく中で助けてくれる存在がいること。

当り前ではないですが「高齢者だから」「障害者だから」 など関係なく、あなたは誰かを救っているんだよ と思いあえるのではないかと感じます。

もちろん、上記に書いたことを全員が理解して、意識の中に取り入れていくことが難しいことはわかっています。
そう思っていないから良い そう思っていないからダメ などなく、その違いを理解していくほうが大切なのかもしれません。

5.就労継続支援B型から見る|支援の多様な受け止め方

体験談に戻りますが、教えてくれたご利用さんもいれば、反対に教えることにものすごくネガティブな方もおられました。

「なんで僕が教えなきゃいけないんですか」 

ごもっともです。

どんなに「高齢者だから」「障害者だから」は関係ないと僕自身が思っていても、そのご利用者は「私は利用者」「あなたは指導員」という枠の中で動いてもらわないと困る。という考えでした。
理解できます。
 否定するつもりなんて全くないですし、「指導員なら僕らを指導してください」と言われるのは当然のことだともわかります。

6.就労継続支援B型から見る|”支えること”と”支えられる”の相互性

哲学者ワッサーマンは「ケアは一方的な行為ではなく相互作用だ」と述べました。

傷口に貼るガーゼを手渡す行為そのものより、“痛みを想像し手を差し伸べる心”こそがケアの本質だと。

利用者とスタッフは互いの痛みや脆弱さを抱え、それを補い合うことで関係を紡いでいます。ケアされる経験は、ケアする力を呼び覚まします。

7.就労継続支援B型から見る|互いの持ち物を振りかざさないように

私は健常者だから支えなければならない 障害者だから支えられなければならない わけではないことをお伝えしましたが

健常者”なんだから” 支えて当然でしょ。と周囲の人間が言う。                                                                                   障害者”なんだから” 支えてもらって当然でしょ。と本人が思う。

これに違和感を感じています。 
目の前の見えたものでしか判断できない人、自分の持っている特徴や特性を振りかざすことは違います。                                                
互いの持ち物を理解していく過程でその使い道を間違わないようにするべきです。

8.就労継続支援B型から見る|“弱さ”を共有し、許しあえるとは

苦手な食べ物があること 数学が苦手なこと 話すのが苦手なこと きれいな字が苦手なこと 学校にいけないこと

僕たちって不完全ですよね それを否定しあうからもっと不完全になるんです

できないこと、苦手なことを自分から共有できること 周りが気づいて助けてあげられること                                                                      「できない」を許すというか、じゃあこれお願いしてもいいかな? とお互いの「できない」を埋めていくこと 「支える」ことが「支えあっている」に変化していく。
「一方通行の支援」ではなくなっていくと思います。

終わりに… 就労継続支援B型から見る|「支える」を超える未来を模索する

就労継続支援B型から見た視点で「支援」「支えあい」のテーマでした

利用者とスタッフの境界線は、制度が引いた線でも社会が貼ったラベルでもありません。

誰もが“支えられる側”であり、“支える側”にもなり得る。だからこそ、わたしたちは“差”ではなく“違い”を歓待し、“支え合い”を循環させる場を創造していく。 
その営み自体が、就労継続支援現場の誇りであり可能性です。