高市早苗政権が与える障がい者施設への影響とその対策

こんにちは。岡山障害者就労支援株式会社の人見です。
高市早苗政権の誕生により、障がい者福祉の現場にもさまざまな変化が予想されています。今回は、高市早苗政権が障がい者施設に与える影響と、その中で施設が取るべき対応について解説します。

高市早苗政権の障害者施設への考え方

「福祉から就労へ」の推進

高市早苗政権は、障害福祉において「福祉依存から就労への移行」を重視しています。これは、障がのある方も可能な範囲で仕事に挑戦し、自立した生活を送れるよう支援していくという考え方です。
具体的には、職業訓練や就労支援の充実に加え、障害のある方自身の自立心を後押しする政策が掲げられています。高市氏は政策全体で成果やスピードを重視する姿勢を示しており、福祉分野においても就労実績や定着率といった数値目標が重視される傾向があります。
就労機会を広げることは重要ですが、その一方で、「一日休まず通所できた」「笑顔であいさつができるようになった」といった、数字には表れにくい成長も大切にすべきだという声もあります。施設現場では、利用者一人ひとりのペースに寄り添った支援を継続していくことが求められます。

障がい者雇用への取り組み(奈良県や衆議院での事例)

高市早苗氏は、地元・奈良県での実績や国会での取り組みを通じて、障がい者雇用にも積極的な姿勢を示してきました。奈良県では、民間企業の障害者実雇用率が令和3年度に2.88%となり、3年連続で全国第1位を記録しています。
これは、奈良県内の企業経営者の理解と努力の積み重ねによるものであり、同県が障害者雇用の先進地となっていることを示しています。また高市氏自身も、衆議院議院運営委員長を務めた際、衆議院職員の障がい者雇用率向上に尽力してきました。
こうした実例から、高市政権は障がい者雇用の拡大を前向きに捉えていると言えるでしょう。障がい者の雇用者数自体は年々増加し、過去最多を更新していますが、依然として法定雇用率(現行2.3%)を達成していない企業が多いのも現状です。
例えば、2025年の鹿児島県の調査では、働く障がい者数は過去最多となった一方、法定雇用率を達成した企業は約57%にとどまり、この10年で最も低い水準となりました。高市政権はこの差を埋めるため、中小企業への支援策や障がい者雇用の啓発にも力を入れると見られます。奈良県での成功事例を全国に広げ、障がい者を積極的に雇用する企業が増えることが期待されます。

就任後の主な政策(補助金の前倒し支給など)

高市氏は首相就任後、まず物価高騰への対策に着手しました。その中で、福祉・医療分野への支援策として注目されているのが、補助金の前倒し支給です。
具体的には、「診療報酬・介護報酬の改定時期を待たず、病院や介護施設の経営改善や、働く人の処遇改善につながる補助金を前倒しで措置する」と表明しています。つまり、本来は来年度以降に予定されていた支援を繰り上げて、今年度中に実施するという方針です。
この動きは、障害者施設にとっても追い風となるでしょう。物価高による光熱費や人件費の上昇に苦しむ施設運営者にとって、前倒しの補助金支給は大きな支えとなります。また、高市政権では支給の迅速化に加え、手続きの簡素化など現場負担を軽減する取り組みも検討されています。
「医療・福祉という重要な社会インフラを守るため、今手を打たなければ間に合わない」という強い危機感のもと、早期支援が実現しました。さらに物価高対策の一環として、重点支援交付金の拡充も打ち出されており、各自治体が障害者施設への支援策をより柔軟に講じやすくなることが期待されます。

施設が準備すべきこと

ポイント

障がい者の就労支援の継続

高市政権のもと、「働ける人はできるだけ働く」という流れは、今後さらに強まると予想されます。しかし、施設側が特に大切にすべきなのは、利用者一人ひとりのペースを尊重する姿勢です。
障害のある方の中には、適切な支援があれば一般就労が可能な方もいれば、支援があっても日々の生活を送ることで精一杯という方もいます。誰もが同じスピードで自立できるわけではありません。「自立支援」という言葉が強調されるあまり、「自己責任」として支援が手薄になってしまうことがないよう注意が必要です。「もっと頑張って自分で何とかしなさい」と突き放すのではなく、これまで通り寄り添い型の就労支援を続けていくことが重要です。
例えば、「週に3日通所できるようになった」「決まった時間に起きて身支度ができるようになった」といった小さな一歩を、支援者と利用者が共有し、共に喜ぶことが大切です。そうした積み重ねが利用者の自信となり、やがて就労への意欲を育む土壌になります。高市政権のもとにおいても、現場の創意工夫ときめ細かな支援が、利用者の成長を支える点に変わりはありません。

A型・B型事業所の本質的な役割

就労継続支援にはA型事業所とB型事業所の2種類があります。ここで、それぞれの役割を改めて確認しておきましょう。
A型事業所は、事業所と利用者の間で雇用契約を結び、給与(賃金)を支払う形態が特徴です。原則18歳以上65歳未満で、一般企業での就労は難しいものの、雇用契約に基づいて働くことが可能な方が対象となり、最低賃金以上の給与が保証されます。

一方、B型事業所は雇用契約を結ばずに利用でき、年齢制限もありません。体力や体調に合わせて自分のペースで通所でき、その対価として工賃(作業のお礼金)が支払われます。B型は特に、年齢や障害特性などからフルタイム勤務が難しい方や、一般就労へのハードルが高い方にとって重要な場です。例えば、1日2時間から働くといった形で、無理のない範囲で働く経験と訓練の機会を提供しています。

A型事業所は、実際の雇用契約のもとで働く経験を積めるため、将来的に一般企業への就職を目指す方にとって、ステップアップの場として位置付けられます。
両者に共通する本質的な役割は、「それぞれの利用者に合った働き方を保障すること」です。高市政権が掲げる「福祉から就労へ」という流れの中においても、A型・B型事業所は、一般就労と福祉的支援をつなぐ橋渡し役として、その重要性は今後も変わりません。

むしろ、デジタル技術の活用や地域企業との連携などにより、A型・B型事業所が提供できる仕事の幅を広げる施策も検討されています。現場としては、「在宅就労の仕組み」や「農業との連携」など、自事業所の強みを生かしながら、本来の役割である「利用者の働く力を育み、支える場」であり続けることが求められます。

施設が準備すべきことは、利用者のニーズに即した支援を継続し、さらに強化していくことです。高市政権の方針を踏まえ、就労支援プログラムを見直す良い機会とも言えるでしょう。
例えば、職業訓練カリキュラムの充実や、企業実習の機会を増やすことで、利用者が一歩でも一般就労に近づけるような工夫が考えられます。また、家族や地域との連携も、これまで以上に重要になります。

高市氏は「家族を軸とした社会の再建」を掲げていますが、施設としては、ご家族に過度な負担がかからないよう専門職として支えるバランスが欠かせません。利用者本人・家族・施設が一体となり、就労への道筋を描いていく姿勢が、今後ますます求められるでしょう。

対策

一般就労実現のための仕組みづくり

障がい者施設にとって、利用者の一般就労(企業での就職)を実現することは、重要な目標の一つです。高市政権の後押しもあり、現在、全国各地でさまざまな取り組みが進められています。障がい者の就職を支援するマッチングイベントや就職説明会が開催され、企業側に障害者雇用への理解を促す場が広がっています。ハローワークや自治体と連携し、地域の中小企業と障がい者施設をつなぐ動きも活発化しています。

こうした流れの中で、施設側も「受け身」ではなく、仕組みづくりに主体的に関与していく姿勢が求められます。例えば、企業見学会の実施、職場実習への同行、ジョブコーチの派遣、就労後の定着支援までを一貫してサポートする体制づくりが有効です。さらに、高市政権はデジタル技術の活用にも前向きであり、オンライン職業訓練やAIを活用した適職マッチングなど、新たな就労支援サービスが今後登場する可能性もあります。施設としても最新情報を継続的に収集し、利用者に提供できる支援メニューを拡充していくことが重要でしょう。

企業側にとっての障がい者雇用の意義

一方、中小企業や製造業の経営者にとっても、障がい者雇用は労働力確保と企業価値向上の両面で大きな可能性を持っています。人手不足が深刻化する中、障がい者雇用に取り組むことで、新たな戦力を得られるケースも少なくありません。

実際、農業分野では、障がい者の力を生かして人手不足や耕作放棄地の問題解決を目指す「農福連携」が広がっています。農業側は安定した働き手を確保でき、障がい者側はやりがいと収入を得られる、双方にとってメリットのあるモデルです。同様に製造業においても、工程の切り出しや合理的配慮を行うことで、障害のある従業員が能力を発揮できる職場づくりが可能です。例えば、ある部品加工会社では、聴覚障害のある方を積極的に雇用し、手話や筆談による工夫を通じて高い生産性を実現しています。

高市政権のもとでは、こうした成功事例を全国に発信するとともに、中小企業向けの助成金や専門家派遣などの支援策が一層充実すると見込まれます。障がい者施設が経営者向けに事例を紹介したり、企業との連携窓口を担ったりすることで、利用者の一般就労を後押しする役割を果たすことができます。

不正受給の徹底排除とガバナンス強化

その一方で、高市政権は福祉分野におけるガバナンス強化にも力を入れる方針です。特に、障害福祉サービス事業所による不正請求・不正受給の根絶は重要な課題とされています。近年、一部事業所において支援実績の水増しや虚偽報告による不正受給が相次ぎ、障がい者福祉全体への信頼を損なう事態が発生しました。2019~2023年度の5年間で、全国では数百件に及ぶ行政処分が行われ、不正受給額も多額に上っています。

こうした状況を受け、今後は監査体制の強化や罰則の厳格化が進むと見られます。施設経営者には、これまで以上に高いコンプライアンス意識が求められます。不正を行わないことは当然として、「うっかりミス」や記録の不備で疑いを招かないよう、職員への研修や内部チェック体制を整えましょう。例えば、サービス提供記録や利用者の出席管理を適切に行い、第三者から見ても透明性のある運営を心がけることが大切です。高市政権は「ガバナンスの強化」「不正防止」「制度の透明化」を掲げています。これ自体は健全な制度運営のために必要な視点であり、真面目に運営している施設にとっては追い風です。不正を行う一部の事業者が排除されることで、真摯に支援に取り組む事業所の評価が高まり、利用者やそのご家族から選ばれるようになるでしょう。

萎縮しない現場づくりの重要性

もっとも、現場の視点から見れば、「疑われることへの不安」によって支援が萎縮してしまうことは避けなければなりません。行政による監査や指導が強化されると、どうしても現場職員は「ミスを指摘されないか」と緊張しがちです。しかし監査や指導が強化される中でも、支援の本質は利用者との信頼関係にあります。書類の整合性は重要ですが、それ以上に「目の前の利用者をどう理解し、どう関わっているか」という姿勢を失ってはいけません。

不正受給の排除が進むことは歓迎すべき流れである一方、現場の士気を維持する工夫も必要です。行政側には、取り締まり一辺倒ではなく、事業所が相談しやすいホットラインを設置したり、軽微なミスは指導に留めて改善を促したりといった配慮が望まれます。施設側も「何かあれば早めに自治体に相談する」「業界団体と情報共有する」など前向きに対応しましょう。健全な運営と質の高い支援を両立させることで、利用者にも安心してもらえる施設づくりにつながります。

健全な運営と質の高い支援を両立させることが、利用者やその家族から信頼され、選ばれ続ける施設づくりにつながるでしょう。

まとめ

高市早苗政権のもと、障害者福祉政策は大きな転換期を迎えています。その特徴を踏まえ、障害者施設が押さえておきたいポイントと対策を整理すると、次のようになります。

① 政策の方向性:「福祉から就労へ」の明確化

高市政権は、「福祉から就労へ」を柱に、障害のある方の就労機会拡大と自立支援を重視しています。就労支援や職業訓練の充実、補助金の前倒し支給など、現場にとって追い風となる政策が打ち出されています。
施設としては、こうした制度動向を正しく把握し、活用できる支援策を逃さず取り入れていく姿勢が重要です。

② 施設の役割は変わらない:利用者に寄り添う支援の継続

政策が変化しても、就労継続支援A型・B型事業所の本質的な役割は変わりません。利用者一人ひとりの状態やペースに合わせ、「働きたい」という気持ちを支え続けることが何より大切です。
数値目標や成果ばかりにとらわれず、日々の小さな成長や変化を丁寧に見守る支援姿勢を維持しましょう。

③ 一般就労への橋渡し:企業と施設の連携強化

施設は、一般就労へのステップとして、企業とのマッチングや職場実習など「橋渡し役」を担うことが求められます。
一方、企業側にとっても障害者雇用は、人手不足対策や企業価値向上につながる可能性を秘めています。農業分野で広がる「農福連携」のように、双方にメリットのあるモデルは今後さらに拡大していくでしょう。施設は、こうした事例を積極的に発信し、地域企業との関係づくりを進めることが重要です。

④ コンプライアンス強化:信頼される施設運営へ

不正受給の排除や監査強化は、業界全体の信頼性を高めるための流れです。適正な運営と高い透明性を確保することで、行政からの信頼を得られ、結果的に利用者や家族からも「選ばれる施設」になります。
不安な点は早めに専門家や行政に相談し、記録・体制ともにガラス張りの運営を心がけましょう。

高市早苗政権のもとで障がい者福祉施策が変化していく中でも、現場の使命は「利用者とともに歩み、社会参加を支えること」に変わりはありません。
政策の追い風を生かしながらも、利用者一人ひとりの笑顔と可能性を大切にする現場の力があってこそ、真の共生社会は実現します。

障がい者施設の専門性を発揮し、地域や企業と連携しながら、障害のある方が安心して働き、活躍できる未来をともに創っていきましょう。
私たちも引き続き利用者に寄り添い、「誰もが自分らしく働ける社会」の実現に向けて取り組んでいきたいと思います。